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青春の憂鬱・朱夏の煌き


一万の夜を超えて~流連~

一万の夜を超え~流連~Ⅷ



そんな不毛な交わりだからこそより激しく求め合ったのかもしれない

僕たちは雪山で遭難でもしたかのようにぴったり抱き合ったまま眠ってしまったらしい。

しかしここは雪山ではなく、裸の若い肉体にはいささか熱すぎた。

べったりと汗ばんだ状態は、二人の眠りを妨げた

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「ドラマのようにはいかないわね」 と、貴子は笑った。


彼女の体を拭く僕の手からバスタオルを取りあげると、僕の手を取り


「この手に一目惚れしたんだったわ」 と、いいながら、掌を自分の頬に当てた。


そして「まだ時間があるから、仕事場近くでシャワー浴びよう」と言った


「家で大騒ぎになってない?」


「ホテルに泊まってると思ってるし、ホテルでは自宅に帰ってると思ってるわ」

外はまだ暗かったが、安アパートの前に駐まっている赤いポルシェは、
以外にも街灯の下でも美しく、毅然と主を待っていた。

八王子インターを降りる頃白々と空が明けてきた。

久しぶりの朝焼けを見たような気がした。

インター出口すぐのホテルにそのまま入った。

派手な外観の建物にも負けない派手な車だが、誰にも会わないシステムになっている。

しかしあちこちの防犯カメラはしっかり僕たちを記録してるだろう・・・

その部屋にはこの手のホテルには珍しく大きな窓があった。

貴子はコートとサングラスをベッドの上に投げ置くと、まるで下着のモデルのように窓に近寄り、カーテンを大胆に開けた。

「えらい自信だな」


「こういうとこは見えないようになってるんでしょ」


「見せたい奴等用かもよ」


と、僕が笑って言うと今度はゆっくりカーテンを閉めた。

「どうせ私は見世物だけど、よっちゃんの裸は下らない輩には見せたくないわ」


「なんだそれ、俺が言うべき台詞だろう」

といいながら、全面ガラス張りの浴室の大きなバスタブにお湯を入れ、貴子を誘った。

「夏の頃より一段と立派な体になってるんだもの・・・ドキッとしちゃったわ。

男性モデル達は、この体を作る為にどれだけ努力してる事かしら。
事務所に紹介したいくらいよ。どう?今より良いお金になるかもよ」

「俺はいいよ。あんたにソンな力があるなら、ツガワ君紹介してやってよ、男前だし。」


「彼はもう大手に所属してるんでしょ」


「スタント事務所みたいだよ。しょっちゅう怪我してる・・・」


「そこまでいったら、あとは彼の運と運命次第ね。
でも、彼はもう出来上がってる感じだし、あのカオならタッパも欲しいとこかな。」

少しおどけた感じで,僕の背中にしなだれた。

もう下着は身につけていないようだった。


「女がしがみつきたくなる男って,こんな男・・・」

「現場のパシリだから、コマゴマした力仕事はけっこう良い肉つくみたいだよ。
オヤジさん達にはナヨナヨのヤサオって言われてるけどね。
突っ立ってると電柱と間違えるから,さっさと動け!ってね。
でも、仕事が終わった後はみんな優しいんだよ、これが!」

軽く振り返り、少しひんやりしている高い鼻のてっぺんにキスをした。

「今でもソープに連れてって貰ってるの?由美ちゃんは最近ずっと来てないって言ってたけど」


「会ったの?なんで?」


「うん、一昨日ね。通用口まえの怪しげな茶店で朝から待ち伏せしようとしたら、その前に出てきたわ。
水戸黄門のお銀に似てるから由美、って言ってたでしょ?ほんとにそっくりで笑ちゃった」


「だから、なんで?」


「文字通り一から、手取り足取り教えて貰ったというセックスの師匠に会ってみたかったし、それに、アメリカに行く前によっちゃんにも会いたくなって・・・偶然を装う計画してたの」


「偶然再会計画?」


「婚約者のいる女になんて会ってくれないだろうし、自分から、結納前日に他の男に会いに行くなんて破廉恥な事も出来ないでしょ?」

「来たじゃん。それに、俺を買いかぶりすぎだよ.。
あんたに呼ばれりゃ、すぐしっぽ振って飛びつくよ」

「ふふ、そうかなあ・・・・彼女とよっちゃん話で盛り上がってたら、どうしても会いたくて我慢出来なくなっちゃった」


「結婚したくないの?悩みすぎてこんなに痩せちゃったわけ?松葉ガニと戯れてるみたいだよ、仕事柄かと思ってたけど・・・」


「松葉ガニって・・・ひどいなあ。由美ちゃんみたいに色白で少しふっくらしたのがいいんでしょ?」

ソープ嬢の話をしながら泡だらけにした僕の体にふざけるようにシャワーを掛け、そして、大きく息をついた。


「10年前から決まってたことで深く考えないようにしてたから、よく分からない。
好きでも嫌いでもないし、それに今、彼も切ない恋をしてるみたいだし、私と出会う前からの恋人と・・・」


「えつ?」


ニッと笑って、バスタブの淵に座らせた僕の膝上に跨いで座り、頬を肩に寄せた。

まさに松葉ガニ状態だ。


「私が一言”婚約破棄!”って、言ってしまえば男女の事だけなら一件落着なんだけどね、一件だけじゃねえ・・・」

「貴子はもう婚約者のこと好きなんジャン。
俺を間男にすることで自分を誤魔化しるだけじゃないのか」


「ううん、最初からお兄様みたいな人。
彼女も私の家庭教師だったから、よく知ってるの。
当時大学生だったけど、知的で優しく、機知に富んでて初めてのディスコにもこっそりつれてってくれたわ。
私はまだ16歳だったけど体が大きいせいか、子供にみられることなかったしね。
大好きだったから彼女のあとをいつもくっついてて、その頃彼にも会ってるはずなのに全くお互い気付いてないの、こんなに目立つ大きな体にも気付かないほど彼はその頃から、彼女しか見ていなかったのね。
映画みたいな人達でしょ?」

悲しい嘘をついている貴子が、16歳の少女の様に見えた。

貴子はその彼に会いたくて、大学生の家庭教師について回ってたのだろう。
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